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「THIS IS OUR MUSIC」に寄する抒情

  • 執筆者の写真: Chitose Yashiro
    Chitose Yashiro
  • 2022年1月17日
  • 読了時間: 4分

「this is our music」に述べられた福間さんの意図に沿い、「架空のイメージの抒情」を物語にてお答えする。


  1. to notice

高くそびえる杉の木の森を分け入れば雨に馴染む貴船神社がある。迎えに来るのは狐火。遠くに朧げなのは漁火か。

来る、迎えが来る。近づいて。阿頼耶識のシステムを順風に通り抜けてその幽国への通用口が開く。


2. fairies

場面は夢のように連続性を持たない。

時だけがある部屋。壁一面の時計、針の音が混じり合いまるで何も聞こえない静寂だ。

去ったはずの狐火の迎えは輿を携え徘徊する。

ここは得体がなく存在の概念だけがある部屋だ。


3. conversation piece

また場面は変わり、彼岸の淵にたたなはる。「蟲師」の光酒の川をまぶたの底に見た。誘うように輝きを留めず、その光から連綿と蛍が生まれ散っていく。

螢たちは物語を語るか?6月の浅い夜の底を時間が自在にさらっていく。

時の流れは浅けれど、樹木が根を張り伸びていくほどのたおやかさを孕む。

50年は気づかぬうちに過ぎ、いつしか建物は朽ちて廃墟の前に立つ。


4. third eye

廃墟になった病院へ足を踏み入れる。耳打つ雨だれ。寝耳に足音。

その音はパルサーの爆発の信号を真似て空気を埋めた。

人なき後、規則正しくして気ままに01を飛び跳ねるマイペースで可愛い精密機械たち。

聞き耳を立てると彼らは語る。「ここに医療で人体を奏でる男がいたんだよ」と。

気ままな彼らを統御しようと1つの精密機械が先導をとって規則正しく奏でるが誰も聞いちゃいない。


5. light years

廃墟のエレベーターは生きていた!

ためらいつつ乗ってみると上へ下へと人を乗せて遊びだす。どうやら向こうにまかせるしかないらしい。

とうとう意を決したように深く下へと潜っていく。

? 押していないのにボタンが光った。こいつは人をからかうのが性分のエレベーターだ。上へ上ると見せかけたランプ表示をして下へ向かってみたり。加速しては止まったり。

エレベーターにも随分と茶目っ気のあるやつがいたもんだ。

ところでこれ降りられるの?

「ほら13階だよ」なんて言っているがこの建物にそんな階はない。くすくす笑うエレベーター。仕方ない、もう少し付き合うか。今どれくらい経っただろう。


おや、止まった。


6. a grand time

扉が開くと建物の中に庭園?

ゲートがあり、整備された庭園。

空の色は青と紫が互いを染め合うソーダを思わせる甘い色。

何も咲いていないが、隠花植物の面影を残す緑で背の低い豊かさを見せ続ける庭。ゲートは滑るように開き、踏まないように気を付けなくても植物たちの方で避けてくれる。

人より何倍も賢い彼らは人間を見てあきれ顔だ。(';')

そして「聴こえたはずの声なき声」が今やっと体現された。声だけが走る。

その声を確認しようにも周りは素知らぬ顔の緑ばかりなり。目の端に見えたオレンジも気のせいか?シェアしようにも周囲は自らの秩序に沿った緑なり。

空の色はいつの間にか薄桃色がセッションに加わっている。


あ、ゲートが閉まる!急いで出なくては。走れ走れ。


7. no disturb

駆け戻った先は一面火の海だった。焼き切れた琴の弦が全てを諦めたようにこれが末期の音だと知らせる。

炎に囲まれた、逃げ場はない。時間さえ焼け落とす炎の温度は人の言葉の下を照らして否が応にも突き付ける。

通りゃんせ通りゃんせ。帰しゃんせ帰しゃんせ。


8. our music

とぼけた音で目が覚めると一面の白い壁。病院だ。

無人の病棟で医療機器が話しかけてきた。

親し気に二進言語で饒舌に滔々と語りかけてくるが、私には何を言っているのかわからない。どうやらこの機器に囚われたようだ。話しかけてくる様は可愛らしく見えるがこれは単なるパターン信号反復だ。意味を見出してはいけない。出られなくなる。

だんだんと機器は怒り出した様に見える。いけない、会話を成立させては。

そう思っているのはこっちだけなんだから。すべては独り言なんだ。


9. aeterna

病院付きの教会。ここもひどい荒れ様だ。

天井など落ちかけていて夜空を眺められる。いつの間にか紺色の夜だ。

夜なのに夜の端は赤く、火星の赤だ。

時間が最期の身を誇るかの様にそれぞれに動き出す。

思い出している。時間が、彼自身一定で永遠だと信じていた時代を。

静かな陰りに幕引きを。


10. caude

それは白く始まった。騒音を覚悟していたが、静謐に粛々として淡々と次々に緞帳を下ろしていく世界各地の時間たち。

後も引かない儀のない別れ。

またね。


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