
Communitarium
「落ちる地面などない。」
そう宣言した学者は高らかに喜ばしく象牙の塔から身を投げた。
学界から無視され、嘲笑され、ついには物理的な障壁を以て迫害されたその学者は墜落することなく身をひるがえし、自らと関わり合って生きる全存在を訪ねるべく太古を敬愛し、原始の英知に首を垂れた「夢の青さを追う学者」となりいつしか旅人の名を得た。
重圧と神話を負う世界。整然をねじ伏せる共鳴の物語。

01「WOODPECKER」
なすがままに錆びる文明の宝船
帆の滴は記憶のよう
陽は無常に落ちていつでも
寄る辺絶やし未来で
出会う姿浮薄で
泣くことない残滓だ
鉄の鳥の波長に何を求めて
水素の大悲できみを見つけ出す
五識を研ぎ重ね合わせて
その度に出会えるきみはまだ息づく
愛しい暗がりを宿して毎秒に呼び合う
不可思議な不可知の記憶
大河の街鉄の墓に
人巡りて波に伝えた
「土の記憶 不二の身なり
相思いて 愛も変わらず」
五情に冴え忍び込ませた
いまご抱く愛子にきみはまだ瞬く
愛しい謎めきを照らして
千載に見える星々の一時
意識を解き繋ぎ合わせて
根源の真砂にきみはまだ輝く
愛しい暗がりを灯して毎秒に呼び合う
不可思議な不可知の記憶
衰雅を抱きかぐわしく暮る夜は
まだ暖かい墓標のよう
いとどに打ち寄せる 明暗の相聞歌
在りし日へと意思をさらう
人類が放り出したその産土の土地に広大無辺の鉄塔を見た男は語った。
キツツキを名乗る塔が見守る産土の土地。そのイマーゴは普遍的にどこにでもある。今はもう忘れられているけれど確かに人の中に息をひそめて静かに瞬いている。
見ろ、その証拠に人は何を破壊したところで前進をやめないだろう。世界を辺境まで耳をそろえて無に帰したとしても必ずまた土偶を作り壁画を描くだろう。
私が生きた記憶の内にいないきみに、利便と合理が惜しげもなく削り落とし、切り捨て、舗装した道の下に埋められたきみに、私は彼の地まで出会いに行こう。
人の人たる一柱に眠る、言葉という進法では根源と呼ばれるきみを「惨劇」の二文字で歴史の中に置き去った未来を去って探しに行くのだ。
未だ彼の地できみと共に生きている証左の風、生きていたかった減衰の里心、生きているはずだったいはけなき童歌、それらのはかなきものを迎えに行きたいと願いつつ私はそこへ降りて行く。明るきと暗きが互いを呼び合う相聞歌を耳の端に留めながら。
輝く中で出会えなくても、水素の大悲でまた会える。
衰雅を抱きかぐわしく暮る夜は
まだ暖かい墓標のよう
放擲の園で人知れず咲く花に
まだ解せぬ風雅を見た
留め置けない さびた老夫の歌
取り戻せない不朽の童子の声
いとどに打ち寄せる 明暗の相聞歌
在りし日へと意思をさらう
名は鳥の真似びでヤードの
鳴くことなく空へも
届きそうな短波の
記号だけの挽歌だ
静寂を示すその国の鉄櫓
もう覚めない卒塔婆のよう
常盤に満ちる減衰の里心
置き忘れた社のよう
簒奪の街のいはけなきわらべ歌
もう叶わぬ命のよう
計り知れない老いた証左の風
取り戻せない冷えた勇士の火は
02「シャンバラのスフィア」
始まりの冬のリボソームの語り部は
森に生まれ来る聖節を明かして
何億劫の時となる
分断の国の異邦人は帰り来て
炎の映し出す気まぐれの神話に
命のフラクタル
ピナートで創造を統べて
ピナートに生き死にを習う
停滞の街の哀轟理を逃れ来て
土に倒れ伏しそばだてる言葉は
千里を駆けた波となる
統合の夢の物語を焚き上げて
流れ流れだす深淵の記憶は
上古の鍵となる
ピナートで創造を統べて
ピナートに生き死にを習う
シャンバラのスフィア
梵天に馴染むリボソームの語り部は
風をもてなして送り出す儀礼に
大地を馳せたグルーオン
統合の夢の物語は結びつき
互いに紡ぎ合う森の火の揺らぎは
命の波となる
ピナートで創造を統べて
ピナートに生き死にを習う
シャンバラのスフィア
始めにピナートありき。
古来より命との対話を続けた民がある。彼らは古木の弟子として、それより降りる系譜の一糸乱れぬさざ波の翻訳者として常に森との駆け引きを守り続けてきたリボソームのまね人だ。
古木の系譜はピナートと呼ばれたが、いつしか彼らの儀式をも指す言葉となった。ピナートは昼の力を入り用だけもらい受けた生命を宿す火を夜の静謐にくべ、燃焼の色から神話を引き出す語り部の儀式。
語る者はその身を宙に保留し、神話が自らを語り出す様を身をもって知ることとなる。
リボソームのまね人たちは昼が絶対的な王権を地に敷き、夜が中庸の姿なき森のさざめきにひれ伏し、教えを乞う相反する合一を遥か昔から語り継いだ民。何たる人の姿の最適さ。
ところが何万年も続いたこのサイクルは時を経るにつれて均衡を崩し、まね人たちは詐欺師の中傷で文字果つる地へ迫害された。そして今や地の果ての冷ややかで麗しい豊穣はロッシュの限界値を侵され崖っぷちの死に体の有様で無き者とされている。
私は今、喜んでこの身を迫害に投げ、リボソームのまね人たちとの対話を試みようと思う。
始めにピナートありき。


a
人の海に凍える羽は その先見を水底に投げた
いつかと沈めた夢宮流れ着き 出会おう
砕かれてたゆたう国を 千夜一夜繋げて見せれば
未来にかざしたトーチに エンデレの系譜
b
帰り着く古巣に 惑うことなく
打ち続ける鼓動は きみに合わせて
2a
人の揶揄に埋もれるきみを 弔いの空舟に乗せて
静かに迎えは来たりて 遠からず出会おう
引き裂かれて朽ち行く花は 彩られて言無きを染めた
古きを注ぐ清廉に 縄文の合図
2b
帰らざる現に 語ることなく
槌振るえる姿は ハレの祝いか
03「縄文ダイナミクス」
この世の流れの一切が渦巻く、海に沈んだ豊かな大陸「コトトリノカミクラ」。
コトトリノカミクラの血を継いだ案内人、マハージャータカはとうとう私の霊魂を迎えに来た。彼女は私の中の潮の響きにその血脈を聞いたのだ。
「あなたが数多生きた過去の一つを今生きて続けましょう。」
私の故郷、コトトリノカミクラ。今、縄文の系譜を己の中に見つけた私は、ジャータカのきみを追いその地を訪ねよう。
そして再びきみとその地に生まれよう。
懐かしく届く声 縄文の窓辺で得た
滅びなき火に焦がれ 口に惑うよりも
流れずに潜む声 情景の色と溶かし
変わりなき野に立てば きみと生まれている
黙せずに誘う声 ジャータカの旅路で得た
限りなき陽を求め 陸に泳ぐよりも
途切れずに響く声 城門の鍵と変えて
言離の海の下 きみと生まれている
04
プロジェクト名
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